大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和33年(ラ)324号 決定

被告人 内田啓二郎

相手方 高橋嘉雄 他一名

〔抄 録〕

相手方等は、抗告人から相手方等に対する横浜地方法務局所属公証人栗山哲作成昭和三十二年第二四五九号金銭消費貸借契約公正証書の執行力ある正本に基く強制執行につき原裁判所に請求異議の訴を提起し、かつ、抗告人が右正本に基き、相手方高橋嘉雄所有の有体動産六点、相手方木野与市所有の有体動産三十点につきなした強制執行の停止を申し立てたところ、原裁判所は、相手方等の申立の範囲を超え、右公正証書の執行力ある正本に基く強制執行の全面的な停止を命じたことは、本件記録に徴し明らかである。しかしながら民事訴訟法第五百四十七条第二項の規定によれば、請求異議の訴の提起に伴う強制執行の停止は当事者の申立に基いてなすべきものであり、裁判所の職権によるものではなく、その停止の範囲につき特に裁判所の裁量を認めた規定はないのであるから、裁判所は当事者の申立の範囲を超えて停止を命ずることはできないものといわなければならない。債務者は、請求異議の訴を提起して債務名義の執行力の全部の排除を求めた場合に、これに伴い当該債務名義に基く強制執行の全部の停止を求めることはもとより可能であるけれども、必ずしも常にかような方法によらなければならないわけではなく、当該債務名義に基いてなされた具体的な特定の強制執行だけの停止を求めることもまた可能であるから、かような申立があつたときはこれを強制執行の全面的停止を求める申立であると解すべきではなく、裁判所はその申立の範囲を超えて当該債務名義に基く強制執行の全面的な停止を命ずることはできない。従つて原決定には申立人の申立の範囲を超えた違法があるから取消を免れず、本件はなお審理の必要があるからこれを原裁判所に差し戻すべきものとし、主文のとおり決定する。

(川喜多 小沢 位野木)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!